今週のサマリー
今週は、2026年6月から実施される診療報酬改定(医療費の計算ルールを見直すこと)がいよいよ本格的に動き出しました。基本診療料(診察の基本的な費用)の引き上げや、医療スタッフの給与アップを支援するベースアップ評価料の新しい点数が決まり、すべての医療機関の運営に直接かかわる重要な段階を迎えています。また、6月24日に開かれた第651回中央社会保険医療協議会(中医協)総会では、入院・外来医療などの実態調査や、治療の費用対効果(かかった費用に見合った効果があるかどうかの評価)についての審議が進み、次の改定に向けた課題の整理が始まっています。一方、マイナ保険証への完全な切り替えについては、2026年7月末に現在の保険証の使用が終わるという期限が正式に確認されました。医療機関・保険者(健康保険を運営する組織)・加入者のいずれにとっても、早急な実務対応が求められています。
主要トピック
第651回中医協総会、入院調査と費用対効果評価を審議
2026年6月24日に開催された第651回中央社会保険医療協議会(中医協、医療保険の点数や制度のルールを話し合う国の審議会)総会では、入院・外来医療等調査・評価分科会からの報告と費用対効果評価(医療にかかるお金と得られる効果のバランスを検討する仕組み)専門委員会の資料が取り上げられました。2026年度診療報酬改定(6月1日施行) の観点からは、6月に実施された改定の状況を踏まえながら、次の改定に向けた制度の見直しや点数体系の議論が本格的に始まったという意味があります。費用対効果評価の検討は、保険者(健康保険を運営する組織)・医療機関・被保険者(保険に加入している人)の三者にかかわる、長期的な給付の設計にも影響します。
🔗 厚生労働省: 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)
2026年6月改定で基本診療料引き上げ、ベースアップ評価料も拡充
2026年度診療報酬改定(6月1日施行) の2026年6月1日から適用された改定として、物価の上昇や賃上げに対応するため、基本診療料(医療機関を受診したときに基本となる診療報酬の点数)が引き上げられました。脳卒中ケアユニット入院管理料は320点増、小児特定集中治療室管理料は最大563点増となっています。また、新たに賃上げを行う医療機関を対象とした外来・在宅ベースアップ評価料(医療スタッフの給与引き上げを後押しするための加算点数)は、初診時17点・再診時4点に拡大されました。2027年6月以降にはさらに24段階評価に広げる予定もあり、医療スタッフの待遇改善を診療報酬の仕組みとして支える体制が整いつつあります。
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旧保険証の利用終了期限が正式確認、8月以降はマイナ保険証等のみ有効
社会保障審議会・医療保険部会(2026年6月18日開催)において、マイナ保険証への完全移行(旧健康保険証廃止) に関連する経過措置(新しい制度への移行を緩やかに進めるための一時的なルール)として残っていた期限切れの旧保険証の利用が、2026年7月末で終了することが正式に確認されました。8月以降は、マイナ保険証(マイナンバーカードを保険証として使う仕組み。スマートフォンでの利用も含む)または資格確認書(マイナ保険証を持たない方が医療機関で受診できるよう交付される書類)のみが使用できます。また、2026年6月中に技術検討会を設置し、同年初秋に関連する方針の素案をまとめる予定も示されており、移行に向けた行政・医療機関・保険者それぞれの実務対応が最終段階に入っています。
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医療DX推進とサイバー攻撃対策が新点数・施設基準として制度化
医療DX推進(電子カルテ標準化・PHR拡充) に関連し、2026年度の診療報酬改定において、医療DX(医療現場のIT化のこと)の取り組みを評価する新しい点数と、サイバー攻撃への対策を施設基準(医療機関が一定の診療報酬を受け取るために満たすべき条件)として義務づける仕組みが整備されました。医療機関のデジタル化を促進しつつ、増加するサイバーリスクへの対応を、診療報酬の制度としてまとめて評価する設計となっています。この施設基準を届け出て維持することが、医療機関にとって新たな運営上の要件となります。特に、情報システムの管理体制が十分に整っていない中小の医療機関にとっては、対応のためのコスト負担が課題となる可能性があります。
🔗 gemmed.ghc-j.com: 医療DX・サイバー攻撃対策を …
追跡中の議題の動向
2026年度診療報酬改定(6月1日施行)
6月施行分として、医師・病院などに支払われる基本的な医療費(基本診療料)の引き上げと、医療従事者の給与改善を評価する「ベースアップ評価料」の拡充が正式に決まり公表されました。また、6月24日に開かれた第651回中央社会保険医療協議会(医療費のルールを話し合う国の審議会)の総会で、入院・外来に関する調査結果の報告と、治療の費用対効果(かかったお金に見合う効果があるかどうかの評価)についての審議が行われ、次の改定に向けた課題の整理が始まりました。
高額療養費制度見直し(2026年8月第1段階施行)
高額療養費制度(医療費が高くなりすぎた場合に、一定額を超えた分を国が負担してくれる仕組み)について、今週は直接の動きは確認されませんでした。ただし、2026年8月の第1段階施行まで残り約6週間となっており、健康保険を運営する団体(保険者)や医療機関では、新しい制度への対応準備が大詰めを迎えています。
健保法等改正案(OTC類似薬・正常分娩保険適用等)
今週の記事では、法改正に関する直接の動きは確認されませんでした。しかし、国会審議ウォッチに掲載されている複数の確定議事録(会議の内容を記録した公式文書)から、ドラッグストアなどで市販されている薬と似た薬(OTC類似薬)を患者が一部自己負担する仕組み、正常な出産を保険診療の対象にすること(現物給付化)、後期高齢者医療広域連合(75歳以上の方が加入する医療保険を運営する団体)において株式の配当などの金融所得を保険料の算定に反映させることなど、改正案の主な論点について引き続き審議が行われていたことがわかりました。
国会審議ウォッチ
※ 国会会議録は確定までに委員会で3〜5週、本会議で1〜2か月のラグがあります。本章は確定済み議事録に基づく回顧です。
2026年4月22日 衆議院厚生労働委員会 第6号|OTC類似薬・正常分娩・金融所得勘案の三論点が集中審議
健保法等改正案(OTC類似薬・正常分娩保険適用等) に直結する健康保険法などの改正案と高額療養費(医療費の自己負担額に上限を設ける制度のこと)見直し法案をまとめて審議しました。自民党の岡本委員は、ドラッグストアなどで買えるOTC類似薬(市販薬と同等の医薬品のこと)を保険の対象から外すことについて、抗菌薬や鎮痛薬の範囲を広げることには慎重な立場を示し、高齢者が費用を心配して病院に行かなくなり、病状が重くなるリスクを懸念しました。正常分娩(合併症などのない通常のお産のこと)を保険適用にする議論では、大きな病院に妊婦が集中しすぎないよう、適切な診療報酬(医療機関に支払われる医療行為の料金のこと)の単価設定が課題として取り上げられました。また、高額療養費制度見直し(2026年8月第1段階施行) にも関わる後期高齢者医療広域連合の保険料を計算する際に株の配当など金融所得(株式や預金などから得られる収益のこと)を反映することについては、マイナンバーを使って金融機関が書類をオンラインで提出することを義務付ける検討が示唆されました。
🔗 国会会議録検索システム: OTC類似薬の保険外し・正常分娩保険適用・後期高齢者金融所得勘案を審議(衆院厚労委)
2026年4月16日 参議院厚生労働委員会 第4号|中東情勢を背景に診療報酬の物価連動改定を参考人が提言
参考人(外部の専門家として意見を述べる立場の方のこと)として出席した全日本病院協会の神野会長が、中東情勢の悪化を背景に医療物資の価格が上がり、供給も不安定になっていると訴え、物価の変動に合わせて診療報酬(医療機関に支払われる医療行為の料金のこと)をその都度見直せる制度の導入を求めました。2026年度診療報酬改定(6月1日施行) にも関係する話として、2026年度の改定率(診療報酬の改定幅のこと)は物価・賃金の上昇がそれほど激しくない時期のデータをもとに計算されており、急激な物価高が続けば次の改定を待たずして病院の経営が苦しくなりうると強調しました。日本医療機器産業連合会の宮田副会長も、石油を原材料に使う医療機器のサプライチェーン(原材料の調達から製品の供給までの流れのこと)が脆弱であることを指摘しました。
🔗 国会会議録検索システム: 中東情勢に伴う医療物資の安定供給・診療報酬の物価連動見直しを参考人が要請(参院厚労委)
2026年4月24日 衆議院厚生労働委員会 第7号|効果の乏しい医療の適正化と社会保険料削減スキーム対策を審議
健保法等改正案(OTC類似薬・正常分娩保険適用等) の審議において、沼崎委員(中道改革連合)が高額療養費の上限引き上げやOTC類似薬(市販薬と同等の医薬品のこと)の患者負担増と合わせて、効果が乏しい医療を見直すことの必要性を主張しました。これに対し保険局長は、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベースという医療データの集積システムのこと)や中医協(中央社会保険医療協議会のこと)の医療技術評価分科会を通じて対応していく方針を説明しました。公明党の山本委員は、形だけの役員就任や低い報酬で被用者保険(会社員などが加入する健康保険や厚生年金のこと)に入ることで社会保険料を減らす抜け穴的な手法への対策を質問しました。年金管理審議官は、疑わしい企業への調査を進めており、不適切と判明した場合はさかのぼって加入資格を失わせると答えました。
🔗 国会会議録検索システム: 効果乏しい医療の適正化・社会保険料削減ビジネス規制も論点に、健保法等改正案審議(衆院厚労委)
その他の主な動き
- ベースアップ評価料(医療従事者の賃上げを支援するために設けられた診療報酬上の仕組みのこと)の6月からの新規算定にあたっての届出期限と注意点🔗 gemmed.ghc-j.com: ベースアップ評価料を2026年6月以降算定する場合
編集後記
今週は2026年6月施行の診療報酬改定が実務フェーズに入り、ベースアップ評価料の届出期限や基本診療料の新点数に関する情報が集中した。マイナ保険証への移行については7月末という期限が目前に迫っており、来週以降も関連動向の注視が欠かせない。国会審議ウォッチに掲載した3件の議事録はいずれも4月開催分であり、現時点での会議録公表状況の実態を示している。全記事リストに6月18日〜24日付の記事が少なく、中医協総会(6月24日)以外の一次資料が限られたため、主要トピックの厚みにやや偏りが生じた点はご留意いただきたい。
情報収集: Perplexity Sonar API